統計データで読み解く世代別エンタメ関連グッズ購入の実態
導入
本記事では、近年多様化が進むエンタテインメント領域における重要な消費行動の一つである「エンタメ関連グッズ購入」に焦点を当て、世代間の違いについて統計データを用いて分析することを目的とします。エンタメへの接触機会や支出は、テクノロジーの進化や社会構造の変化に伴い世代間で異なる傾向を示すことが先行研究で指摘されています。しかし、個別のコンテンツやサービス利用に関する調査は多い一方で、特定の作品やアーティストを支持する文脈で発生するグッズ購入という消費行動に特化し、世代間の違いを包括的に統計データから分析した研究は限定的です。
社会調査研究において、エンタメ消費行動は個人の価値観、可処分所得、ライフスタイル、そして特定の世代が共有する文化やトレンドを反映する重要な指標となります。本稿が、この領域における世代間比較研究の一助となることを期待します。
統計データに基づく世代別エンタメ関連グッズ購入の実態分析
本分析では、架空の調査である「令和5年度 エンタメ関連グッズ購入行動に関する世代別実態調査」(調査主体:〇〇研究所、調査対象:全国の10代~70代の男女〇〇名、調査方法:インターネット調査)のデータを用います。この調査は、過去1年間のエンタメ関連グッズ購入経験の有無、購入頻度、年間支出額、購入したグッズの種類などについて詳細な質問を含んでいます。
1. エンタメ関連グッズ購入経験率と購入頻度
まず、過去1年間に何らかのエンタメ関連グッズを購入した経験があるかについて、世代別のデータを見てみましょう。
- 図1:世代別エンタメ関連グッズ購入経験率(過去1年間)
- このグラフからは、特定の世代でグッズ購入経験率が高い傾向が見られます。例えば、20代や30代といった比較的若い世代での購入経験率が他の世代と比較して高くなっています。これは、これらの世代がSNS等を通じて特定のコンテンツやアーティストに関する最新情報を積極的に取得し、ファンコミュニティとの交流が活発であることと関連している可能性があります。
- 一方で、50代以上の世代でも一定数の購入経験者が存在し、エンタメ関連グッズの購入行動が特定の若い世代に限定される現象ではないことが示唆されます。ただし、その対象となるエンタメジャンルや購入目的には世代間で違いがあると考えられます。
次に、購入経験者における購入頻度について分析します。
- 図2:エンタメ関連グッズ購入経験者の世代別年間平均購入回数
- 購入経験がある層に限ると、やはり20代、30代の平均購入回数が他の世代より多い傾向が見て取れます。特に、特定のエンタメコンテンツやアーティストに深くコミットする層が厚いこれらの世代では、「推し活」の一環として定期的にグッズを購入する行動が定着していると考えられます。
- 他の世代では、特定のイベント時や記念に購入するなど、購入頻度は相対的に低いものの、単価の高い商品を厳選して購入する傾向がある可能性もデータからは推測されます。
2. エンタメ関連グッズへの年間支出額
エンタメ関連グッズへの年間支出額についても、世代間で顕著な違いが見られます。
- 図3:世代別エンタメ関連グッズへの年間平均支出額
- 年間支出額に関しても、20代、30代が他の世代を上回る傾向がデータに表れています。これは購入頻度の高さに加え、購入単価の高い商品を複数購入したり、限定品や高価格帯のグッズに投資したりする傾向が反映されている可能性があります。
- 興味深いのは、50代以上の世代でも、購入経験者は限定されるものの、購入経験者の平均支出額は他の世代と比較して必ずしも低いわけではないという点です。これは、特定分野(例:伝統芸能、美術品関連、趣味性の高いコレクターズアイテムなど)に対する深い関心や、経済的な安定性を背景とした高額商品の購入が影響している可能性が考えられます。
3. 購入されるグッズの種類と傾向
どのような種類のエンタメ関連グッズが購入されているかについても、世代間で傾向の違いが見られます。
- 図4:世代別主要購入グッズの種類(複数回答)
- 若い世代(10代~30代)では、アパレル、小物(キーホルダー、缶バッジなど)、トレーディングカード、フィギュア、ランダム商品などのコレクション性が高いアイテムの購入率が高い傾向が見られます。これらは、日常的にエンタメへの支持を表明したり、ファンコミュニティ内での交換や共有を楽しんだりする用途が多いと考えられます。
- 一方、上の世代(40代以上)では、コンサートグッズ、限定版のパッケージメディア(CD/DVD/BD)、書籍・パンフレット、あるいは特定の趣味(カメラ、鉄道など)に関連する高価なグッズや記念品の購入率が相対的に高い傾向が見られます。実用性や記念品としての価値を重視する傾向や、長期的な収集を目的とする傾向が強いと推測されます。
これらのデータは、世代によってエンタメへの関わり方や、グッズ購入に求める価値が異なることを示唆しています。若い世代は「共感」「共有」「自己表現」といった要素をグッズ購入に求める傾向があり、上の世代は「記念」「コレクション」「品質」といった要素を重視する傾向があると考えられます。
結論と今後の研究への示唆
本分析では、統計データに基づき、世代別エンタメ関連グッズ購入の実態について、購入経験率、購入頻度、年間支出額、そして購入グッズの種類という観点から比較検討しました。その結果、特に20代、30代といった若い世代でグッズ購入が活発である一方、上の世代でも特定の領域や目的に応じた購入行動が見られることが明らかになりました。購入されるグッズの種類にも世代ごとの傾向があり、それぞれの世代がエンタメに求める価値や消費行動の背景にある要因が異なることが示唆されました。
今後の研究においては、これらの定量的なデータに加え、各世代のライフステージ、可処分所得、エンタメ情報への接触経路、ファンコミュニティへの参加状況といった定性的な要因や他の統計データを組み合わせることで、世代別エンタメ関連グッズ購入行動のより多角的な理解が進むと考えられます。また、テクノロジーの進化(例:デジタルグッズ、NFTなど)が今後のグッズ購入行動に与える影響についても、継続的なデータ収集と分析が求められます。